夏物語

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夏物語

仏間から漂う線香の匂い。 窓の外では、早起きの蝉たちが競い合うかのように鳴き喚く。 どこまでも深く優しい空の色は、子供の目にはありふれたいつもの風景だった。 山や田畑の眩しいほどの緑。 涼しくどこか儚い風鈴の音。 どっしりと大きく、もくもくとした入道雲が、今も忘れられない。 あの日の思い出。 あの夏の記憶。 もう戻れない、懐かしいあの頃。 あなたには、心が揺さぶられるような、懐かしい風景、季節の匂いはありますか?
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