第5話 語る

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第5話 語る

 湊音と悠子と三葉の楽しそうな声が襖越しに聞こえるのだが、気づくと俺は仏壇に戻ったようだ。  スケキヨは大きなあくびをして再び座布団の上に座っている。  あ、そうそう。読者の皆様。はい、今俺はこの話を読んでるあなたに話しかけています。仏壇から。 ちょっと話がややこしくなる前に。ご説明いたしますと。  悠子は俺の前妻との間に生まれた娘である。もう20なん年前のことになるのだが。 俺の勤め先の高校に大学生で教育実習生として来た彼女と出会い授かり婚で結婚するが、2年で離婚、悠子を連れて彼女は家を出て行った。原因は価値観の不一致であった。 そのあとに美帆子は当時の教え子だった湊音と再婚したが、これまた2年もせずに今度は悠子を置いて愛人の元へ行き2度めの離婚。悠子は湊音が男手一つで育ててきたのである。 俺は離婚後、悠子にずっと会いたかったが、美帆子との離婚後に北海道の学校に転勤となり、再会できたのは……俺の死ぬ一年前であった。  「悠子」という名前はゆったりと平和な時を過ごせる子になってほしいと、願ったのだ。  生まれたばかりの悠子を抱かせてもらった時、お世話してあげた時、沐浴した時、ミルクを飲ませた時……それから少し大きくなってハイハイして、つかまり立ちして、ヨチヨチ歩き、普通に立って歩いたのをみたときは感動した。いろんなところに行った。一緒の時を過ごした。俺は少しの時間でも悠子の父親であった。  2年だが俺を父親にしてくれたし、とても幸せな時だった。しかし2歳まで一緒にいなかったせいもあったわけで、悠子は記憶がないという。写真も美帆子に捨てられてしまい無い。悲しいことだ。    すると部屋の襖が開いた。もう話は終わったのか?
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