君が嫁ぐ際には

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少し寒さが残る春。桜はほぼ散ってしまっている。綺麗なのはあっという間だ。あの桜のアーチはとてもうつくしい。天気の良い時にはあの下を車で通るのが楽しみであった。  そんな昼下がり、我が家に客が来た。湊音と悠子親子だ。湊音みなとはよく来てくれるから勝手がわかってる。しかし悠子は初めて上がるからキョロキョロしている。 「いらっしゃい。悠子ゆうこちゃん、スリッパ使ってね」  と、妻の三葉みつはが2人を出迎える。悠子はピンク色のスリッパを選んだようだ。やっぱり女の子だからかな。ちなみに湊音は青いスリッパだ。もう馴染んでるのだろうか。  2人はダイニングに通され、悠子は綺麗に包んである、多分あれはシャ●レーゼのお菓子の詰め合わせであろう。それを持って来たようだ。食べたいなぁ。 「ありがとう、悠子ちゃん。いつも湊音くんも持って来てくれてるのにわざわざ……」 「いえ……」  悠子は緊張しているようだ。三葉はそのお菓子を渡されて運んできた。  湊音も、悠子も続けて部屋に入ってくる。 「あなた、湊音くんと今日は悠子ちゃんも来てくれたのよ。」 「悠子連れて来たよ。大島さん。」  悠子は黙って座っていた。そして両手を合わせた。  悠子、来てくれたんだな。ありがとう。  俺はずっと会いたかったよ。と直接言えないのが残念だ。  抱きしめてやることもできない。涙をポロポロと流す悠子に湊音はハンカチを渡す。湊音、ありがとうな。俺の代わりに。  俺はもう涙を拭うことができない。よく来てくれたな、娘よ。
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