第2話 借りてもいいかい?

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第2話 借りてもいいかい?

 俺はもう死んでいる、ってなんかのアニメのようなセリフを言う日が来るとは思わなかった。まだまだ四十も半ばだった。  5、6年前に轢き逃げに遭い、しばらく昏睡状態からの奇跡的復活するものの、焦って無茶してリハビリ中に転倒、頭を打ってしまい…元々事故で悪かった神経系が悪化して、少しずつ全身が動かなくなり……俺はあっけなく死んでしまった。  一度若い時に結婚、離婚をして十数年後、今の妻、三葉と結婚して幸せな日々だったのに……。2人の間には子供は授からなかったのだが。  俺のいる部屋にはテレビが無いから、たまに聞く三葉の報告を聞くしか情報を得られない。  3人は俺のいる仏壇のある和室から離れてダイニングに行ってしまった。  おーい!こっちにもテーブルあるからっ!そっちに行くと声が聞こえないだろ。  こう言う時はどうすればいいのだろうか。悠子がここに来ることはもう無いぞ。んー……。  ああっ、こう言う時はどうすればいいんだ?幽霊として動ければいいのだが、なぜか動けない。  ニャーニャー。  あ、スケキヨ。我が家の長老猫。全身真っ白で目のフチが黒いからあの映画のスケキヨってつけたんだ、俺が。  お前はここにいてくれるんだな。そうだよな、俺が一番可愛がってたもんな。いつも仏壇の前の座布団に座ったり寝てたり。  ……  スケキヨ、お前の体借りていいか?なんてな、そんなことできるわけないよな。
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