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第4話 その猫、凶暴につき
「でもこわい」
え?
「見るのは好きだけど抱くとなると怖いなぁ……」
「残念、スケキヨ。じゃあ、あんたはわたしが抱っこするね。」
えー、娘よぉ……。まぁいいか、目の前には悠子いるわけだし三葉に抱かれてるのも幸せだな。うむ。
そもそも二人は今日は何をしに、というのは俺は知ってる。三葉が来る前に報告してくれたが悠子本人の口から出るまで待とう。
「改めてですが……」
おい、湊音。お前が言うのか。
「スケキヨ、暴れないで」
湊音はびっくりしたのだが落ち着いて話を続けた。
「悠子が今度結婚することになりました。」
……悠子が結婚するのだ。相手は誰なんだ。それはまだ知らない。三葉も知らないようだ。悠子は少し頬を赤らめて俯く。
「よかったわね、良い人が見つかったのね」
悠子は頷いた。うぬ、良い人……なんの基準を持って良い人なんだろうか。相手は誰だ。それを知りたい。
「ぜひ結婚式に出席していただきたいので……お願いします。」
と三葉に招待状を差し出す悠子。そこには見覚えのある人の名前が書いてあった。
桐生拓人……
俺の教え子で剣道部元主将!確か去年、警備会社に入ったと聞いてはいたが……。三葉も何度か部活の練習に来てご飯をこしらえたり、合宿の手伝いをしていたから桐生とも親しかったもんな。
……でも悠子、いつのまに桐生と付き合ってたんだ?!すると目の前の悠子は笑った。
「スケキヨ、さっきからずっと私をじーっと見てて面白い。」
いや、その、な。見つめすぎたか。猫でも熱視線を送ることができるのか。
「まだ悠子ちゃんも大学卒業したばかりなのに……確か就職も決まってたんじゃ……」
そうなのか。ん?じゃあなんだ?ん?
まさか……
「実は、お腹に赤ちゃんがいます……」
なーんーだーとー!!!!
スケキヨは思いっきり暴れた。するとテーブルのティーカップは倒れコーヒーがこぼれた。
「スケキヨ!何暴れてるの!!!……ごめんね、びっくりさせて。
……それにしてもおめでとう、ダブルで!」
なに、妊娠だと。悠子が妊娠?結婚前にだぞ。
あ、招待状にコーヒーこぼしてしまったようだ……
「スケキヨ!あんたは和室にいなさい」
三葉の逆鱗に触れてしまった。まだ話を聞きたいんだけども……!!!和室に締め出されてしまった。
まだなんか話してるけど、聞こえない。はぁ。
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