真っ赤な!

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 階下で玄関を開ける音がする。 「おばさんこんにちは。」  入ってきた奴が誰だかすぐわかる。 けれど今日の俺はオペレーション210930(フテクサレ)の真っ最中なのだ。 関わってやる暇など俺にはない。  とんとんと階段上がって来る音が近付いてくる。  来なくていい! 俺はオペレーション210930の真っ最中だぞ!軽々しく寄って来るな!  すーっと引き戸が開く。 「いる?…」  居ようが居まいが俺はオペレーション210930の最中だ、お前などに関わっている暇はない!  布団の中の俺は相手に背を向ける様にして潜り込んだ。  衣擦れの音がして、俺の側にあいつがやってきたのが分かる。けれど相手はいつまでたっても声を掛けて来ないでずっと黙っていた。  当然俺も布団から顔を出さずに無視を決め込む。お前に何か気付いていないぞと、そうさ、気づいていないから顔を出さないんだ。 別に気まずくてそうしている訳じゃない。 「あの… さ… 」  沈黙に耐えかねたのか相手が声を掛けてきた。 「その、なんか、大丈夫…?」  いつもの元気な声じゃない、こいつ、俺を気遣ってやがる。そうじゃないだろ!そこは逆だろ。 「当然だ!俺はいつでも絶好調だからな!」 「布団の中のくぐもった声じゃ説得力無いし…。」  まぁそれはそうだが、顔を出す訳にはいかないからな。ダサすぎて。 「学校来なかったみたいだから…。」  俺はああと答えた。  こいつはちょっと明るい声を出して言った。 「でもおかしいね、友達がね?なんか、来てたって言うのよ。あんたが。」 「見間違いじゃねぇの?」 「そかな…。」  そこからまたしばらく会話が続かなかった。帰れよ。 何しに来たんだこいつは。 ちらっと聞いたんだけどね…?そう前置きしてこいつは言った。 「なんか、謹慎受けた生徒が居たとか居ないとか…。」  なんだよ、知ってんじゃないか。 「もし、あんただったら何か気落ちしてんじゃないかなって…。違うんなら別にいいんだけどさ。」  気落ちだと?何のん気な事言ってんだこいつは。なんだか腹が立ってきた。 俺を心配して様子を見に来たって?慰めに来たって?冗談じゃない!  顔は見せたくないがちゃんと言いたいから口だけ布団の横から出して言う。
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