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「お前はどうなんだよ!俺の事なんざどうでも良いんだよ!人の心配してんじゃねぇ!」
「どうでも良くないよ!」
怒鳴り返す相手の声色から膝に押し付けたその拳が握り締められているのが分かった。
「いいわけないじゃん…。なにさ、顔を出す勇気もないくせに。」
こいつ…。
「あんたさ、勝手に決めてるでしょ。この前私が告白された事でさ、何か傷ついてるとかって…。冗談じゃないわ。今日返事をしに行ったわよ。」
強めの声だった。
「行ったらさ、会おうとしないのよ。ふざけているでしょう?自分で好きだって言った女の子が会いに来ているのに友達使って会わせようとしないのよ。」
「もういい。その辺にしておけ。」
俺はいたたまれなくなって遮った。
俺は朝見たんだ。
部長がテニス部の元カノと仲良くご登校している所を。こいつがあの野郎から告白を受けたのが昨日だってのにだ。
「聞いてよ。もう笑っちゃうのよ!」
「やめろって!」
「ここからが面白いの!私強引に部長の所に行ったわ!」
「やめろよっ!!」
こいつが自虐的になるのは耐え難かった。俺の前でくらい強がるのをやめろよって思った。
気が付けば相手と目が合っていた。
布団を跳ねのけていた。
なんてこった。事もあろうにこのダサい姿をさらしてしまった…。
だってのにこいつはいつもみたいに馬鹿にする訳でもなく、笑う訳でもなく、なんかちょっと泣きそうな、ちょっと切なそうな、変な顔をして俺を見た。
「お、おい。ここ笑うとこだからな。」
するとこいつは力が抜けたように年下の悪戯っ子でも見るみたいにちょっと上から目線の笑みを漏らした。
「笑う?むしろかっこいいじゃん。」
「なんだと?」
「いつもが酷過ぎるからちょっと整ったんじゃないの?」
ぼこぼこに腫れあがって絆創膏やらシップだらけの俺の顔を見てこいつはそう言った。ひでぇ事言いやがる。
「それにね、今日もっと面白いもの見たから比較にならないわよ。」
こいつはそう言って可笑しそうに笑った。
「話の続きになるけれどね?私が目の前に来たら部長ったら慌てふためいてね。そりゃそうよ!あの学校有数のイケメンがジャガイモみたいにべこべこのひっどい顔しているんだもの!鼻とか瞼とか腫れあがっちゃって、あちこち黒ずみっていて、えー?別人!?って思ったくらい!お腹抱えて笑っちゃったわ。甲斐甲斐しくフォローしている彼女さんがお気の毒!こ~んな酷い顔の人とは付き合えませんって大声で言ってあげたわ。」
「お前…」
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