真っ赤な!

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 こいつは真剣に悩んだんだ。生まれて初めての告白を受けていつもの元気を無くして、こいつの事だから自分や相手やそれを取り巻くいろんな奴らのことまで考えて、ろくに飯も食わずに寝る事も出来ずに悩んだに違いないんだ。  そんな奴が相手の見た目だけで短絡的に答えを出すわけがない。  頭の良いこいつは部長の隣に元カノが居た時点で察したのかもしれない、だとしてもそこは怒り狂って良かった。相手を責め立てて良かったんだ。 それに今だって、心を弄ばれた苦しみに泣くじゃくっていい筈なんだ。  今朝、俺が正門の近くでたまたま出くわした部長達(あいつら)は二人して笑っていやがった。  気の迷いだったとか、ちょっとした諍いだったとか。 あんまり腹が立ったから彼女の前だったが言ってやったんだ、昨日告白した癖にってな!  彼女の方はちょっと驚いたようだったがそれでも笑っていやがった。 『なに?そんなことしたの?もうっ。』とか余裕かましてやがった。  部長も部長で本気じゃない事くらいわかるだろとか言いやがって。あの野郎自分の言葉を真っ赤な嘘にしやがったんだ! 真面目なこいつの気持ちを踏みにじりやがったんだ!  そうさ、男が誠意もなしに愛を語って良いものか!ましてやあいつは初めて受けた告白だったんだ!ああっ!今思い出してもはらわたが煮えくりかえる! 「だ~れとやり合ったんだか知らないけどさ、喧嘩なんかした事もない奴が勝てそうもない奴に吹っかけるなんて、挙句一人だけ謹慎?自爆も良いとこじゃない。」  喧嘩した事もない、か。幼稚園の時こいつを泣かしちまってから人に手出しするのやめたからなぁ。 けど今回のは腹にすえかねた、と言うか考えるより先だった。理性より先に手が出たんだから止めようがない。 まぁ敵さんは学校に居たようだから謹慎は俺だけだったって事か。3年は内申書に響く様な事はさせないって配慮か。  こいつの言うように自爆も良いとこだ。 「うるせぇ!こっちが認めていない以上俺は負けていないからな!」 「負けとか勝ちとか、もうばっかみたい。そうじゃないでしょ?なんでそんなことしたのよ。」 「ああ?メンチ切られた以上引けるかっての!男の意地だ!女にゃ分らないよ。」  相手は笑った。 「嘘。」 「嘘じゃねぇ。」  俺が言うと悪戯っぽい目を向けて来る。 「おおかた、お目当てだった相手がやっとフリーになったって思って告ろうとしたらよりが戻ってて逆切れしたんでしょ?」 「おう。良く分かったな。わりいかよ。」  俺がそう言って顔をそむけるとこいつはしばらく黙っていた。  それがちょっと長かったものだからちらりと様子を伺うと、妙に穏やかな目で俺を見ている。気味悪い。 そしてやおらくすっと笑った。 ああ!しまった!鎌を掛けられた!  けどこいつはしてやったりと言う顔もせず、穏やかな顔のままぽつり言った。 「あんた… そう言うトコあるよね…。」  どういう意味で言ったんだ?
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