真っ赤な!

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「なんだか惨めだわ…。」  そうじゃない。お前は惨めなんかじゃないんだよ。だから俺は続けた。 「そうさ、俺は惨めだよ。だがお前は違う。なにせ人気のイケメンに告られて振ったんだからな!そこは胸張っとけ。ああ、張っても無いもんは無いか。」 「何そのセクハラ発言!ちゃんとあるわよ!あんたが知らないだけだからね!」 「言っとけ言っとけ。」 「あ!あ!なにそれ!馬鹿にして!あんたこそコテンパンにのされて男としてどうなのよ!」  返す言葉も無い…。 「け、けどな!喧嘩の強さが男の価値じゃないからな!」 「胸の大きさが女の価値でもないわ!って!これじゃ私が無いみたいじゃない!だいたいあんたってね、私にすら勝てないんだから喧嘩なんかしないの!」  俺はぷっと吹き出した。  ああ、なんかこいつらしくなってきた。 「何よ!何よっ!」 「いや?」 「何よ!言いなさいよー!」  俺は首を振りながら笑った。 「なんでもないさ。」  こいつが元気を取り戻して来ているように見えるのはなんだか落ち着く。 「なんでもないのになんで笑ってるのよー!」  不満そうに口を尖らせながらもこいつの表情もほころび始めた。 「なんでもないって。」 「何この人~!気味悪いんだけど~!」  とうとうこいつから笑みがこぼれた。 俺を軽く突く手にも生気がある。 「お前さっきかっこいいって言ったじゃんか。」 「え~?言ってないわよ。誰よその価値観崩壊した人!」 「お前だろ!」 「って言うかさ。あんた自分が今どんな顔しているのか知ってる?」 「んなの知ってらぁい!」  ん?  なんで急にこいつ赤くなってんの?何で黙ったの?  あっ!ああっ!!やっ!そうじゃないっ!  やたら顔が熱くなってきた。そうじゃないんだっての! 「お、おい!今の違うからなっ!そういう意味じゃないからなっ!」 「わ、わかってるわよ!な、何言ってるの?!真っ赤になっちゃって!」 「なっているもんか!お前こそ!何意識してんだよ!そうじゃないからな!そ~いうんじゃないからな!言葉通りだからな!意識していないから使えたんだからなっ!」 「ばっかじゃないの?意識なんてしてないわよ!言葉通りなんでしょ!そんなの知ってらぁいっ!!」  俺、怪我人なんだけどね…。  鼻血を吹きながら倒れることを実感しながら、あいつが階段を駆け下りていく音を俺は聞いた。 
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