プロローグ

1/1
486人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ

プロローグ

「私のこと、"本当は"好きじゃないんでしょ」 通算4回目。 お決まりの言葉が聞こえてきて辟易(へきえき)とする。 別れる時は、どんな相手にも大体こう言われる。 俺なりに好きだから付き合うことにしたんだけど、どうやら温度差があるらしく、自然消滅か振られるパターンが多い。 笑顔が可愛いと思うとか。 一緒にいると楽しいとか。安心するとか。 体に触れたくなるとか。 そういう一般的な感覚はある、と思う。 少なくとも好きな部分はあるし、体の相性が極端に悪いとかそういうのもない。 でも、俺と付き合う内に「愛されていない」と感じるんだと。本当は好きじゃないんだ、って思うらしい。 …というか、そもそも「本当に好き」ってなんだよ。 「だからさぁ、秀隆(ひでたか)。いつも言ってるじゃねーか。俺が溺れるくらい愛してやるって」 「お前の言うことなんて信じるかよ」 「つれねぇなぁ」 もしも「本当に好き」というものが、こいつの言う"愛"なんだとしたら…歪すぎると思う。 忌々しげに睨み付けると、目の前の男は腹立たしいほど整った顔で、にんまりと笑った。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!