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プロローグ
「私のこと、"本当は"好きじゃないんでしょ」
通算4回目。
お決まりの言葉が聞こえてきて辟易とする。
別れる時は、どんな相手にも大体こう言われる。
俺なりに好きだから付き合うことにしたんだけど、どうやら温度差があるらしく、自然消滅か振られるパターンが多い。
笑顔が可愛いと思うとか。
一緒にいると楽しいとか。安心するとか。
体に触れたくなるとか。
そういう一般的な感覚はある、と思う。
少なくとも好きな部分はあるし、体の相性が極端に悪いとかそういうのもない。
でも、俺と付き合う内に「愛されていない」と感じるんだと。本当は好きじゃないんだ、って思うらしい。
…というか、そもそも「本当に好き」ってなんだよ。
「だからさぁ、秀隆。いつも言ってるじゃねーか。俺が溺れるくらい愛してやるって」
「お前の言うことなんて信じるかよ」
「つれねぇなぁ」
もしも「本当に好き」というものが、こいつの言う"愛"なんだとしたら…歪すぎると思う。
忌々しげに睨み付けると、目の前の男は腹立たしいほど整った顔で、にんまりと笑った。
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