87人が本棚に入れています
本棚に追加
天使が出ていった扉をボーッと見ながら思考する。
今まで過ごしてきた記憶と共に前世の記憶もある。
というより、つい先程思い出した。と言った方が正解だ。
飛び出した彼女は鴒二(俺)の婚約者で咲夜というらしい。
そして、俺である鴒二は天才ではないが、悪いわけでもない。上の兄が天才タイプで周囲からは散々比べられて生きてきた。が、兄が出来すぎているだけで弟の鴒二の努力が霞んでしまって目立ってないだけなのだ。
父や母、兄は鴒二の事を認め、気にかけてくれているが、親戚やらいろいろなやつらは所詮、他人事でもっと出来て当たり前だ!だのお前の兄はこれくらいすぐ出来ていただのと責め立てていた。
へー、そうっすか~と今なら笑って流せる。
そして、両親、兄弟の気持ちもわかってやれる。
前世の記憶を思い出したからな。
36歳という若さで前世では死んでしまったが、良い役職までのぼりつめていたわけで、今は人生2周目の真っ只中。
前世で身に付けていたノウハウを生かして
生きてやらぁ。と思える。
前世の記憶を思い出したからな。記憶を。
大事なので2回繰り返す。
思い出す前は伊集院家の次男として自分なりに家を支えるべく努力をしていたのに誰にも認めてもらえず、日々心は荒んでいっていた。
婚約者は完璧主義者で事あるごとに「これはこうしてください」、「あなたは伊集院家の次男なのですよ。軽率な行動を慎みくださいませ」やら「そうではありません。私は鴒二様、あなたの事を思ってー・・・」など目くじらを立てて言われ続けた記憶が大半を占めており、その事に日々嫌気が差し距離をおこうとしていたことも記憶に新しい。
*
最初のコメントを投稿しよう!