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プロローグ
「あのさ」
彼が、言う。
いつもは笑顔でニカニカしてる彼が。
真剣な、深刻そうな顔で私を見つめている。
言いたいことは、分かっている。
「…どうしたの?」
言わないで。分かってるから。
だが、目を伏せながら、彼は少し悲しそうに言う。
「もう、無理だ。」
やめて。お願いだから。
彼は一度、顔を上げて私に何かを言おうとしたが、口ごもる。
「…」
「奏斗、私は」
私は…
「もう、お前とは一緒にいられない。」
「…なんで?」
「なんでって…っ!」
ばたん。と、彼は崩れ落ちる。
彼は倒れたまま、私を悲しそうな目で見つめながら、目を閉じた。
刺してしまったんだ。私が、彼を。
どうしてこうなってしまったんだろう。
これは、報われなかった彼女の過去のお話。
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