ネットで○○探し

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ネットで○○探し

最近中高校生が、全く知らない人に加工こそしているものの誰かくらいは判別できそうな写真を簡単に公開している。 ネットで知り合った相手にいきなり「写真見せて」とぶっきらぼうに言い、言われた相手はそれに従い見せる。 私はなんというか、できない。 顔に自信がある方ではないし、誰が見るか分からないネットの大海原にほおりなげるのは自殺行為だ、と思っている。やっている人を非難しているわけでなく、自分がそうするかと言われたら、絶対にしないという話だ。 顔を予め知っている相手ならえげつない変顔を送るが、それとこれとはまた別だ。 色んな危険はあるけれどネットと断ち切るわけにはいかない。この時代に生まれたからには、時代に沿っていかなくてはならないのだ。友人関係がままならなくなる場合もある。やな時代だ。時代のせいにする私もいただけない。 そんな私にも冒頭で述べたような機会が訪れた。 「何歳?写真見せて」 出会いを求めているのだろうが、あからさま過ぎる。 まず女性に年齢を聞くこと事態失礼だ。 そんな奴とあんな事やこんな事に発展する事など考えられない。 私は丁重にお断りをする。固い文面でもって相手に威圧感を与えるのだ。 とある相手が写真を要求してきたので、それを実行するとにっこりと笑ったスタンプが返ってきた。 かと思ったら、ぱたりと返信が来なくなった。 え……と呆気にとられる。 話したいんじゃなくて写真見たかっただけかよ。 もし言葉に従って写真を送っていたら悪用されていたかもしれんと震えた。そして「こいつ自信まんまんに送ってきたぜw」などという文章を添えられるのだ。 私の考えすぎが功を奏した。心底安心した。 少し時間がたち、落ち着いた状態でそのスタンプをまじまじと見て考える。 なぜ、笑っているのだろう? 「ツれない女に引っ掛かった」という苛立ちを笑って誤魔化している? 「お前の顔は既に全世界に知れわたっている。無駄な足掻きをした所で素性はバレバレだ」 という不敵な笑みだろうか? そういった意味が込められている気がしてならない。自意識過剰な妄想を炸裂させながら静かにアプリを閉じた。 もし相手が出会いを極めていたら、断った途端怒りをぶつけてくるのだろうか。 「お前何のためにSNSやってんだよ!」とか「写真見せられねぇならやるな!」とか言われるのだろうか。 そうしたら私は「汚い顔を晒すのは身内だけで充分です」と答えてやろうと人知れず心の中で決めた。 そしてある者は何を思ったかエロいアニメは好きか問うてきた。 好きかどうかで考えたことはない。 触れてこなかった道だ。 暇だったので会話が途切れるのを拒み、好きだよだ何だと返信した。 そやつはハーレム系が好みらしくこれがいいよと勧めてきた。 私は密かにハーレム系は地雷なのだが、と思いながらも勧められるがまま見た。 うーん……。 作画は好きだが見られるもんじゃない。 幸せな休日が一気に罪悪感で満たされてゆくのを感じていた。 こんなものを見せるためにスマホを買い与えたんじゃないぞ!、と脳内お父さんが叫び、脳内母親がよよよと泣いた。 "何故見たのか" 答えは簡単。 興味本意だ。 触れたことのない世界に触れたかった。暇がもたらす力は恐ろしい。すぐに履歴と見た記憶を消し、そやつからの質問攻めを軽く受け流しタイミングを見計らってブロックさせてもらった。 ネットとは恐れ知らずで突き進んでくる人が多いようだ。もし、私が彼の知り合いだったらどうなっていたか。学生であれば、とてつもなく気まずくて辛い日々を過ごすことになるだろうってのに。 逆に格好いい。 自分の欲に真っ直ぐな生き方だと思う。 私も「寂しいから誰かと繋がっていたい」という親和欲求がある。 彼らと大差ないのだろう……求める結果が違うだけで。 そんな中、一人の女の子に出会った。トプ画の自撮りした女の子は本人であろう。文面からは真面目さが伝わってくる。かなりの好印象を受けた。 私はもうSNSを友達探しのツールとして見ていた。 彼女は何でも気兼ねなく話してくれた。話していくうちに心を数ミリずつ開いていった。 ネットに対して固くなりすぎていたのやも知れない。私は考えを改め、その子と様々な事を話した。 初めて私として話せることができた。 好きな動物の事や自分の価値観。 孤独を感じていた寂しい時間が瞬く間に埋まっていく。 その奇跡的な出会いからしばらくたった日のこと。 彼女は姿を消した。 アカウントが消されていたのだ。 しばらく立ち尽くし、全く知らない相手だけれど心を許した相手に見限られたという悲しみが押し寄せてきた。 ……ふとエロハーレム系が好きなブロックした相手を思い出した。 彼もこんな気持ちだったのか、と。 好きだと言うから優しさで教えてやったのに返答は素っ気なく、挙げ句の果てにはブロックときたもんだ。 彼に悪いことをしたなと思った。けれど彼に関する情報を全て消したので、もう謝罪の言葉を述べられる場はない。 もう何があろうとネットとは知り合い程度の関係でいようと決めた。友達のようになったらスナック感覚で消され、なかったことになる。恋人のように親密になったらなったで拡散される運命が待っているのだ。 なら、私はそんなことを絶対にしない本物の友人を探しに出掛ける。 そう思いながらも結局行き着く先はネットなので、堂々巡りだけれど。
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