おーい……ここだよぉ

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おーい……ここだよぉ

朝、まだ時間に余裕があったので布団の上でくつろいでいた所 「ピピピピッ」 という無機質な電子音が部屋に響いた。 目覚まし時計だ。 その日は長らく使っていなかった部屋で寝ていた為、目覚まし時計の所在が分からない。 ベットの上にはいなかった。 汚れが目立つこの部屋のどこかにいるのか。 そう思い、声だけを頼りに探した。 「ここにいるんだよォ」 と叫ばれているがなかなか見つからない。 心なしか音が大きくなっている気がする。悲鳴に近い。 ベットの下を見ると、埃をかぶり、電池が少ないからか文字が薄れている時計を見つけた。 ……ずっと、私を起こそうとしていたのか。 私の姿は見えずとも、私の下した命令に従い、来る日も来る日も帰らない主を呼び続けて。 健気なショッキングイエローを愛しく思った。 今、目覚ましとして使っているのはスマートフォンである。 軽快な音楽は憂鬱な朝に合わない気もするし、この音楽=朝になるので街中で聴いたらストレスで心の中で泣いてしまう。 だから歌詞のついた曲ではなく元から目覚ましソングとして入っていた曲にしている。 好きな歌を自分から嫌いになるなんて悲しすぎるからだ。 目覚まし時計を手に取り、お役目ご苦労様、ゆっくり眠れよ、と目覚まし時計をただのデジタル時計に戻した。 次の日の朝。 それでも鳴る。 怖い。もう怖い段階だ。 思念が宿ってしまったのか……? そう思いながら電池を抜くと、速攻で息絶えた。 すぐ電池を入れてやり、蘇生するとただの時計に戻っていた。 私を呼び続けた孤独な日々も、綺麗さっぱり忘れていてくれてるといいけれど。
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