ヨーグルトの思い出

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ヨーグルトの思い出

『腐った牛乳が固まってヨーグルトが出来る』 本だか漫画だかで見た情報だ。 当時の私は小学校低学年。 「そしたらうちの牛乳なんて全部ヨーグルトになってるわ」 と内心馬鹿にしていた。 牛乳が腐って固まるという想像が出来なかったのだ。ましてやあんな美味しいヨーグルトになるなんてあり得ない、と。 私はお腹がすぐぴーぴーになっていたので、乳製品とは距離をおいていた。 が、本当にヨーグルトになるのか知りたい気持ちが徐々に芽生え、牛乳に興味を持ちはじめていた。 私は平均からしたら背が低く、背の順に並ぶと前の方になる。 どちらかと言うと前の方が居心地が良かった。名前の順では後ろの方で、先生の声が聞こえなかったりと不便だったからだ。それに前というだけで優越感に浸れた。 けれど少し、気ががりなことがあった。 後ろを向くと、並んだ皆の頭の上にひょっこり顔を出した女の子が見える。 スラッとした背。華奢な体。整った顔。 美人さんの要素がこれでもかというくらい備わったクラスメートの女の子。 誰もが、彼女のようになりたいと思っていた。 私はというと、彼女のようになるのは無理だと、幼いながらに理解していた。 だからせめて背だけでもスラッと高くなれたらいいのに。そんな少女漫画の冴えない主人公のような思考回路をしていた。 けれど私は思い付いたのだ。 ……あっ、牛乳!! 安易な考えだがそれで、牛乳を飲み続けることを決意した。 私の中で牛乳は背を伸ばすためだけのアイテムだった。コップ一杯ごとに何センチか伸びるんだとバカ真面目に思っていたくらいだ。 給食には牛乳が出る。 よく牛乳が余り、飲みたい生徒たちがじゃんけんをする光景を思いだし、私もそれに参加した。 参加しているのはほとんどが男子だった。牛乳のことだけを考え、牛乳を手に入れるために、競いあう。 先程まで汚い話で盛り上がっていた男子たちは、今や戦場に立っているかのように凛凛しい顔をしている。 私はだんだんここにいるのが場違いな気がしてきていた。 私は彼らのようにどうしても天下が取りたいわけではない。 けれど、今さら引き返すわけにもいかず、私は背が高くなりたいと書かれた旗を掲げて果敢に向かっていった。
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