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「泣くなよ、相変わらず泣き虫だな」
酎ハイをかき混ぜながら苦笑する一村の声でようやく我にかえる。
「泣くかよっ!」
垂れかけた鼻水をズズッと啜り、ジョッキに残ったビールを無理やり喉に流し込む。
胸が苦しいのは、ビールの苦味のせいだ。
「涼くんは、一村くんのこと大好きだもんね」
酔いが回っているのか、透子ちゃんが奇天烈なことを口にする。
「さすが透子ちゃん! 坂崎は一村がいないと生きてけないくらい好きだからな!」
わはは、と顔を紅潮させて笑う河野。
この発言はどう考えても飲みすぎだ。
だって僕は。
どんな時でも泣き言ひとつ言わない一村に敵いっこなくて。
いつだって泣き言ばかり言う僕の側で笑ってくれるのは結局一村で。
そんな強い一村の事が、
力になれない不甲斐ない自分が、
「悪いが俺は女しか興味無いぞ」
「一村なんか大っ嫌いだっ!!」
昔から大嫌いだった。
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