開戦!VS全能神

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開戦!VS全能神

▽寝坊した狐姫ユウ・アトライト やばい。ほんとなら、朝一で騎士達の元へと行ってユウ・アトライトですって一緒に行くはずが寝坊して到着に遅れちゃった。トーカが起こしてくれたらしいんだけど、全然起きなかったらしい。 それで、大急ぎで現場へ来てみれば既にネイは来ていて何か始めていた。せっかちだし、なにしてるんだか…。 「ユウジ!?ちょっ!まじ!?わわわわ!もう止まんないよ!?これ!」 ネイは、相変わらず元気いっぱいらしいね。久しぶりに会った気もするけど、変わらないネイになんか安心した。撃とうとしていた魔法は止まらないらしいけど…。まったく…。 「それ、止まんないんだね。じゃあ、こっちに撃って。わたしがなんとかするから。」 わたしはとりあえず王都に影響がなるべく出なさそうな位置に陣取る。あのネイが撃とうとしてるのって、ただの魔法じゃないよね。神力入ってるっぽいし、神魔法的ななにかなのかな?解析(アナライズ)が出した答えはビームっぽいけど…。 「これさすがにユウジでもキツイんじゃない?」 「大丈夫大丈夫。わたしも前に会った時よりかは強くなってるから。あ、ミトラ。念の為、皆を守っておいてよ?空間系使えるんだし、できるでしょ。」 ミトラはわたしの言葉に一瞬だけ目を見開いたけど、すぐに元に戻った。あれ、前に見た時空間系のスキル持ってると思ってたけど、違ったのかな。 「……心得た。こちらは気にするな。」 ミトラってわたしと一緒で、口より頭の中が活発なタイプだよね。次の発言するまでにテンポ遅くなっちゃうし、簡潔に話しすぎて伝わらなかったり勘違いされる事多い。 そんなことをしているうちに、どうやらネイの魔法は臨界点を迎えたみたいで発射寸前だった。……さて、久々にトーカと頑張るかなぁ。 わたしは今扱える力を最大限に練り合わせる。魔力…妖力…精霊力…気力…それと虚無。次にトーカの能力だね。 トーカの力は単純明快。身体能力と刀の耐久と斬れ味の引き上げなんだけど、ちょっと特殊だったりする。代償を払うことでしか恩恵は受けられない。じゃあ、代償って何?って話だけど、命寿(めいじゅ)ってトーカは呼ぶんだけど、なんて事はない。わたしの魂の寿命を喰らって、それを燃料に力を発揮するだけ。喰らう量が多ければそれだけ出力も大きくなる。ってことで、これも今やれる全力で…。 『トーカ、秒間百でいこう。』 『ふむ、ちと過剰な気もするがいいじゃろう。』 その言葉と共にわたしの中から、何かが抜け落ちていく感覚と、溢れ出る力を感じる。わたしは身体の感覚を掴む為に、刀を数回振ってからネイに向き直る。もう、限界だねあれ。 「ユウジ……ちょっともうきついんだけど!」 「ごめんごめん。撃っていいよー。」 辛そうに顔を歪めたネイが、わたしの言葉でネイの頭上にあった白く光る玉っぽいやつの制御を手放した。……手放した時、ニヤッてしたの見たからねわたし。 ピュキィィィィィィィィィンッ ネイの制御から解放された魔法は、白い輝きを強めたかと思うと、甲高い音を出してレーザー光線のようなビームを発射した。速度も結構早い。強化されたわたしだから追えるけど、この領域に居ない人からすれば文字通り光の速さだと思うんじゃないかな。 「おーらい…おーらい……。よい……しょっと!」 距離感を掴む為に、掛け声を出しながらタイミングを測る。丁度いいタイミングで、わたしはトーカを下から上と振るった。 ビームの軌道を真上の上空へと逸らす。ビームは結構細かったんだけど、内包するエネルギーだけはやたらと多くて、一部が逸らしきれず辺りに散り出す。放置すれば大きな被害が出ると判断したわたしは、すぐにわたしの固有能力(ユニークスキル)を使う。 「やっば。吸収(アブソーブ)!!」 辺りに散り出していた膨大なエネルギーは、わたしのスキルによってわたしへと吸収されていく。正直なとこ、こんないかにも害のありそうなエネルギーは吸収したくなかったんだけど仕方ない……。 しばらく、魔法の効力が尽きるまで断続的に発射されるビームをトーカを使って逸らし続けて、その度に溢れ出るエネルギーを吸収した。 「吸収者(アブソーダ)……。本当になんとかしちゃうなんてね…。さすがユウジだね!」 わたしの奮闘のおかげもあって、ネイの魔法は効力を失って蒸散した。わたしの二つ目のスキルは吸収者(アブソーダ)。いろいろとできることはあるけど、基本は解析(アナライズ)吸収(アブソーブ)しか使わない。 「ふぅ。なんとかなった、なんとかなった。……それで、ネイ?一応聞くけどさ、わたしがこうして現れたんだし止めない?」 「ふぇ?何言ってるのユウジ。こんな楽しくなりそうな戦い、やめるわけないじゃん!」 「だよねー…。わかってた。」 結果はわかってた事でも、希望は捨てきれなかったわたしは確認したけど案の定の答えだった。こうなったネイはもう何を言っても聞かない事はわかってるから、わたしは呆れながらも刀を構える。構えると言っても半身に身を引いて、右手に持つ刀を正面で持つだけなんだけどね。刀術なんて習った事ないし。それでも一応、トーカの歴代の使用者達の刀術は記憶や感覚としてわたしの中にあるから素人みたいな事にはならないけどね。 対するネイは無手だった。何度か戦ったことがあるけど、ネイは徒手空拳を使うわけじゃない。それでも、スキルを多様する為に素手の方が戦い勝手はいいんだと思う。全能を名乗るだけあって、武闘派の神の中でも最上位に位置するネイは強敵だ。気を引き締めていこ。 ▽狐姫の幼馴染 マイ・カンザキ ユウジが現れた。わたしはその姿に一瞬目を奪われて動きを止めてしまうものの、すぐに意識を覚醒させてユウジの元へと駆け寄ろうとした。けど、それは止められた。 「お待ちください。ユウ様の邪魔はさせませんよ。」 全身を白い服で身を包んだ。クリーム色の髪が特徴的なかわいい子だった。歳は同じくらいなのかな?まぁ、そんなことより今はわたしを止めないで欲しい。ずっと待ち侘びた人が帰ってきたんだから。 「ちょっと!邪魔しないでくれる?わたしはユウジの元へ行かないといけないの!」 「いえ、行かせられませんね。……ほら、始まりますよ。」 イライラしながらも、美少女が顔を向けた方へと一緒に向いた。そこには、禍々しいほどに黒いモヤモヤに包まれたユウジと、今にも発射されそうな全能神が出した魔法があった。 ピュキィィィィィィィィィンッ! 甲高い音と共に発射された、全能神のビームは、目に見えない速さでユウジに迫ったけど、一瞬だけ姿がブレたユウジがビームを上空へと逸らした。そして、それを皮切りに何度も何度も、何度も何度もビームはユウジへ向けて発射されていった。それをことごとく上空へ逸らし続けるユウジ。 「なんなのあれ……。あんな速さのものどうやって……。」 「さすがユウ様です……。」 わたし達はその光景を見て、無意識に呟いてしまっていた。勇者パーティの一人として、わたし達と一緒に居たユウジとは明らかに強さの次元が違う。 わたしが戸惑う中、無限に続くと思われたビームの応酬は終わった。ユウジが来たおかげで、神達とは戦わなくて済みそうになったわたしは安堵の息を吐いた。が、目の前の美少女は言った。 「まだですよ。これからです。本当の戦いは。」 そして、全能神とユウジの戦いが始まった。
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