45人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
バイバイしてから別れると、わたしは元来た道を引き返す。忘れようとしても離婚の言葉が頭から離れない。どうしよう。知佳ちゃんに相談してみようか。
帰ってから直ぐに部屋に行き電話を掛ける。
「恵美香ー。夕飯は?」
母が心配をする。
「ああ、知佳ちゃんと電話したら直ぐに行く」
わたしは階下に向かって叫んだ。
「もしもし、恵美香?どうしたの」
「知佳ちゃんに相談があるの」
「なになに修学旅行から帰って早々」
「ビックリしないで聞いてね、実は家のお母さんね、お父さんと離婚したいんだって」
「う、嘘でしょ、まさか」
「何だかね、お父さんの会社危ないんだって、それにお母さん好きな人が出来たって、お母さんが私を引き取るって言うの」
「うそー。恵美香のお父さんって凄いカッコいいんでしょ」
「うん」
わたしは見えない知佳ちゃんに向かって大きく頷く。
「お母さんの悪い冗談なんじゃない?」
「そうだよね」
わたしはまた涙が溢れて来たのが解る。どうしよう。父と離れるのは嫌だ。
「兎に角、月曜日詳しく話は聞くよ。元気だして。ねっ」
「うん。それからそうだ。今日上田君が家に来たよ」
「えー。急じゃない。恵美香ったら忙しいんだね」
「うん。家族皆でテレビゲームした」
「それなら、それこそ離婚は嘘だよ」
知佳ちゃんが電話の向こうで引き攣り笑いをしたのが解る。わたしもちょっとだけ笑ってしまった。
わたしはそれから、眠れず考え込んでしまう。離婚、離婚、ああ嫌だ。知佳ちゃんの言う通り嘘であってほしい。
それから、時計の針が1時を回る。夜更けに1人で考え込んでいるのが辛くて、皆が寝静まったのを確認すると、冷蔵庫から父のビールを取り出した。
えーい。やけ酒だ。少し飲んでみよう。それにお父さんは高校の時、普通にお酒飲んだって言っていた。わたしはビールをゴクゴクと一気に飲んだ。
最初のコメントを投稿しよう!