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「ただいまー」 父だ。わたしは跳ね起きて階段を威勢よく降りていった。 「お帰りなさーい」 「ああ。恵美香。どうだった北海道」 「凄く楽しかった。あのね、お土産は後から宅急便で届くの」 「そうか。お土産は恵美香の話を聞くだけで、お父さんは大満足だよ」 「じゃ、札幌の話をするね」 恵美香は壊れたステレオのように次から次へと思い出を話した。 気が付くと夜も遅くなってしまった。でも明日は土曜日、私も父も休日である。父はビールを片手に楽しそうにわたしの話を聞いていた。 「それでね、同じクラスの子がウィスキー買ってきたの。あっ」 わたしはつい喋ってしまう。後から訂正しようと思ったが遅いようだ。父はビールをテーブルに置いた。 「何、何、ウィスキーだって聞き捨てならないな。恵美香はそれでどうしたんだ?」 「ちょっと飲んでしまったの。でもちょっとだけだよ」 嘘である。泥酔して、父が大好きだと宣言してしまった。父はちょっと口角をあげて笑った。 「まあ、高校生だし、少し位ハメは外すもんだよ。お父さんとお母さんが付き合い始めたのも高校生の時からなんだ、ねえ、お母さん」 「そうね、懐かしいわ」 お母さんは顔を赤くしている。 そうか、両親は若い時期に結婚している。高校生の頃から付き合っていたとしても不思議ではないだろう。 「お父さんくらいの年代の人間は高校生くらいからお酒、飲んでも不思議じゃなかったよ」 父が遠くを見つめるような顔をする。 「お母さんと初めてデートしたのは、関西に修学旅行に行った時、大阪の街だったんだ」 「えっ、京都ではなく大阪なの?」 「うん。京都では観光メインで楽しんだけれど、大阪って開放感が出る不思議な街なんだよ。そこでね、自由時間に生卵の乗ったカレーを一緒に食べたんだよ」 ああ、カレーなんだ。修学旅行でカレーとは。我が家の伝統なのか。
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