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綾香はまるで迷子になったような心細さで、足元はグラグラと安定感を失くして行った。誰かに背中を一押しされたら簡単にコロコロと転がり落ちそうな心地だった。
『自分は社会人なのだ。女の上司ってメンドクサイなんて言ってる場合じゃない。どうにか修復しなければ……』そう何度も綾香は自分を励ました。
毎朝、綾香のデスクの上に安藤からのメモが置かれていた。一日の業務の支持が書いてあるのだ。それは触れば冷たさで火傷しそうな直筆のメモだった。
『いい加減にして!』綾香の心の叫びだった。
これ見よがしな安藤の冷淡な態度はすでに周知の事になっていた。周りは気まずそうにしていたが、誰も救いの手を差し伸べる様子はなかった。
『社会ってこういうものなのかな……まるで学生のいじめじゃないか』綾香は段々と鬱状態に陥り、とことん追い詰められて行った。
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