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一方安藤は綾香に対して形のない、嫌悪に近い気持ちを抱くようになっていた。ついこの間まで可愛かった部下の些細な振舞いが、無性にモヤモヤするのだ。モヤモヤの捉えようのない正体に安藤は苛立ちを覚えていた。
悪気のない相手というものは悪気の無さを押し付けられる側からすれば、例えば心に土足で入ってくるような場面でも、中々表立って抗議や反撃が許されないものだ。
何故できないのか──それは相手に悪気が無いからだ。言えば無敵なのだ。
安藤は綾香の悪気の無い無邪気な強引さに小狡さを感じたり、イライラしたりした。それはこれと言って根拠があるものでも無く、そういう風に思ってしまう自分にも腹がたった。
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