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他人の心の機微に疎い綾香も、流石に安藤の態度には傷つき参っていた。自分に何か問題が有る。それは間違いないと綾香は思っていた。しかし安藤が別段声を荒げる訳でもなく何か指摘する訳でもない。ただ冷たい空気だけが安藤と綾香の間に横たわっていた。
「あのう、安藤さん。ここの所なんですが」恐る恐る安藤に綾香は声を掛けた。
「はい……?」
「A案とB案で迷っているんですけど、どちらが正解ですかね?」『しまった。こういう言い方まずい?』
「吉川さんの考えで良いと思いますよ」取り付く島がなかった。
『もっと、安藤さんに頼るべきだった? でもそんなの一々面倒臭いよね。仕事が速いとか可愛くない? 出来ない子の振りをした方が良かった? あ、書類の不備を指摘した事があった……他の社員の前で…あれが気に触った?』
綾香は誰にも聞けない問いを自分に繰り返し問うた。
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