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秋の歌
モンパルナスの駅から一歩踏み出し
金穂の中より大聖堂を見上げよ
秋の日のヴァイオリンは
この青きカテドラルから聴こえる
ステンドグラスの右翼の薔薇窓で
ヴァイオリンの響きに
小刻みにふるえる蝶が翔びたとうとしている
昼下がりには
淡く白熱する神が
宵には
夕暮れの海のごとく深く沈むサマリアの女が
ガリラヤの風に育まれた者を見つける
青きカテドラルのグラスには
ときおり神秘も降りるのだろうか
薔薇窓が緑に燃えあがる
そこから秋に孵り蝶は飛び立つ
神秘は、やはり舞い降りるのだ
秋の日の鐘のねのごとく
ヴァイオリンは青きカテドラルから響くのだ
ガラスの蝶をふるわすほどに
だが
風に消えてゆくその音色は
だれが紡ぎだすのか、私はいまだ知らない
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