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僕の腕も、まだ捨てたもんじゃないな……とも思ったのに、
その1匹以降は、まったく捕まえられずに、
いつしかモナカはぐにゃりとやわらかく崩れて、
持ち手の金具からはずれてしまった。
「はい、終わりね。1匹とれたね? その金魚は、君にすくってもらいたかったんだろうね?」
と、店主が金魚を小さなビニール袋に入れてくれながら言う。
「……すくってもらいたかった?」
妙な言い方だなとも感じつつ、
ただの夜店特有の粋な切り返しだろうと、けれどそれに僕自身が上手い受け答えができるわけもなく、「ええ、まぁ……」とだけ頷いた。
そうしてしゃがんでいたのを立ち上がると、なんで金魚すくいなんてしたんだろうとも思っていた。
金魚の入ったビニール袋を手渡されて、
ぼんやりとそれを見つめていると、
「大事にしてやってね」
と、店主に笑顔を向けられた。
「はい……」
反射的にそう答えて、僕は金魚入りのビニール袋をぶら下げて、
神社を後にした──。
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