夏の日の紅い金魚

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家に帰り着いて、金魚を移すための器を探した。 でも金魚など飼ったことのない僕の部屋には、金魚鉢などはもちろんあるわけもなく、 水槽の代わりになるようなものも見当たらなかった。 僕は容れものを探しあぐねて、押入れの奥に使わずにしまい込んであったアルマイトの洗面器の中に、とりあえず金魚を入れることにした。 明日になったら、ちゃんとした容器を買ってこようと思いながら、 金魚を水を張った中へ放って、パンを細かくちぎって与えてやった。 金魚はおなかがすいていたのか、パンをぱくぱくと食べると、 やがて満足したように水の中をくるくると泳ぎ始めた。 足の短い丸卓の上に洗面器を置き、 水面にくーるりくーるり円を描くようにゆったりと泳ぎ回る金魚の姿を、 僕は頬づえをついて、飽きもせずに眺め続けた──。
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