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「私……誰だか、わからない?」
女の子が、口をひらいて応えた。
質問に質問で返されて、僕は戸惑い、
「いや……わからないけど……」
もう一度改めて彼女を見たけれど、誰なのかなどわからない上に、ましてやまったくの見覚えすらもなかった。
昨夜のことを思い出してみても、
覚えているのは、夏祭りに行って金魚すくいをしてきたことだけだった。
「昨日……会ったとかじゃ、ないよね?」
他に思い当たるようなふしもなく訊く。僕の知らないところで、彼女と知り合っていたんだろうか?
「昨日? どうして昨日会ったって、思うの?」
また、疑問に疑問返しだ。
僕は埒の明かない会話にいい加減困って、
「覚えてないんだよ。悪いけど、君のこと」
と、正直に口にした。
瞬間、女の子は悲しそうな表情を見せて、顔をうつむけた。
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