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愛しているのに、触れることさえ出来ない。いや………寧ろ、愛しているからこそ、触れることすら望めないのか。
せめて、ティアラが『巫女』でなければ。自分が『近衛将軍』でなかったならば。そんなことは、考えても詮なきこと。
わかっているのに、アシュレイはふと気付くと、そんな風に考えてしまっている。それほどまでに、ティアラを愛してしまっていた。
無論、アシュレイは〝ティアラの美貌〟に魅せられたわけではない。まぁ、それも惹かれる理由の一端ではあるのだろうが。
アシュレイが惹かれたのは、寧ろ、ティアラの清らかさであろう。戦に生きる自分とは対極にあるからこそ、焦がれている。
有翼人とて人である。人と言うのは、正反対のものに惹かれ、それを身近に投影することが多い。友人然り、恋人然り………。
ティアラは女神の如き美貌と慈愛。聖者の如き神聖さと清らかさを持っている。ティアラの清らかさは、アシュレイがどんなに欲しても、手に入らないもの。
-だって。アシュレイは『戦神』とまで謳わ
れる戦の天才、『近衛将軍』なのだから-
光が闇を求め、闇が光を求めるように。血に濡れ、穢れた自分が、神聖で清らかなティアラに焦がれる。
アシュレイは、自分の〝ティアラに対する想い〟を自覚しているが、その立場故に言い出せない。
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