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-アーケイディア王城 謁見の間-
「陛下。近衛将軍アシュレイ、大聖殿付き巫女ティアラ。お召しにより、罷り越しました。」
ティアラを伴ったアシュレイは、謁見の間の奥、数段高い位置に座す国王の前で騎士としての礼を取る。
ティアラは臣下の礼を取る。公的立場は『巫女』であったとしても、国王にとってティアラは臣下だからだ。
それ故、近衛将軍であるアシュレイは〝一騎士〟として、ティアラは〝一臣下〟としての礼を取る必要があった。
アーケイディアの国王は『賢君』の誉れ高い。善政を敷き、臣民に敬われ・慕われている。
とは言え。きっちりと階級わけされた〝身分制度〟は存在する。国王には為政者としての威厳も必要であるためだ。
アシュレイの母は、同腹の王妹であり、王とアシュレイは伯父と甥の関係にある。近しい血族であるが、公私は分けねばならなかった。
因みに、アシュレイの父は先代の近衛将軍だ。しかし………アシュレイが若くして、近衛将軍の座に就いたのは、決して『親の七光り』などではない。
国王の身内贔屓でもない。あくまでアシュレイ自身の実力と努力、国家への献身的忠義の上に成り立ったもの。
それはティアラにも言えること。ティアラの母は『巫女』ではなく、女性でありながら、辺境神殿の神殿長の座に就いていた才媛。
母から直々に洗礼を授けられたティアラは、母を上回る神々しさを放ち、神聖魔法にも高い素養を産まれ持っていた。
アシュレイもティアラも、幼くして両親を失い、自らの実力と努力によって身を立てた。
ある意味、境遇を同じくした同士であったのだ。アシュレイの後見には王が、ティアラの後見には宰相ザディウスが就いたのだ。
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