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自ら望んで『洗礼』を受け、神殿に使える神職に就く者もいれば、人間族同様の農業や商業に従事する者と、様々であった。
強大かつ邪悪な魔力を持つ魔族が放つ〝闇の波動〟さえ受けなければ………。事実、勇者達の戦いは、その〝闇の波動〟を放つ魔族を討伐するためのものだった。
-それはすなわち『聖戦』だ-
〝闇の波動〟から解き放たれたとは言え、魔族を迫害する風潮がない、とは言わないけれど、ほぼ『共存』は順調だった。
そして、それは魔族にとっても他種族にとっても、新たな……大いなる進歩だったのだけれど……………。
-『悲劇』はゆっくりと忍び寄っていた-
-始まりは、辺境の異変。他の六種族はおろか、魔族でさえも関知せぬ未開の地………所謂、魔境や秘境と呼ばれる土地に〝魔物が現れた〟と言う知らせがもたらされた。
幸い、野生動物以外が住めるような土地ではないので、それほどの被害ではなかったが、何かしらの理由があり、そこを訪れていた人間と有翼人の数人が『殺害』されたという。
何とか命を取り止めた、唯一の生き証人である有翼人が言うには〝見たこともない魔物〟だったらしい。
野生の獣の仕業とは思えぬ、凄惨な有り様だった、とは発見した者の言だ。魔境や秘境ならば〝見たことのない生き物〟はいるだろう。
生き証人の有翼人が『魔物』と言ったのは、その生き物が〝闇の波動〟を纏っていたから、だと………。
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