始まりの終わりか、終わりの始まりか

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 元より、ティアラは『大聖殿の巫女』の御位(みくらい)にあり、穢れなき身でなければならない。  『戦』を常として、剣を奮うアシュレイとは文字通り〝住む世界が違う〟のだ。地位も立場も………生活圏さえ異なる二人には、今まで接点らしい接点すらなかった。 「俺とお前に、王からの御召しだ。悪いが一緒に来てもらおう。」 「アシュレイ様はともかく、わたくしにまで?一体、何用でしょう?」  困惑しきり、と言った様子のティアラに、大聖殿の奥宮の扉を開けた人物が声を掛けた。 「行けばわかることだろう。早く行きなさい、ティアラ。陛下をお待たせしてはいけない。」  アーケイディア宰相『ザディウス』。人間族だが、幼い頃に両親を失ったティアラの後見人で、親代わりだった。  普段は城の宰相執務室に詰めていることも多いが、ティアラの後見人であることもあって、大聖殿の統括も宰相の仕事なのである。 「…………………。行くぞ、ティアラ。」  何か言いたげに宰相を見つめていたアシュレイだが、『スッ』と顔を逸らし踵を返すと、ティアラの返答も待たずに、スタスタと聖堂から出ていってしまう。 「えっ、アシュレイ様、お待ち下さいッ!宰相様、では行って参ります!」  ティアラは宰相に頭を下げると、慌ててアシュレイを追い、聖堂を出ていった。 -聖堂に残った宰相。すると、今まで何処にいたのか、聖堂の柱の影から二人の人物が姿を現した。  アシュレイと同じ年頃の若い有翼人の男と、ティアラと変わらない年齢であろう人間族の女。
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