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結局、オヤジは僕を肩にかかえると外科病院に駆け込んだ。
この先は朦朧として良く覚えていない。
「チクンとしますよ」といわれ注射をされてからはほぼ意識がなかった。
どうやら病院で傘の柄は外され、僕は口の中を5針を縫う怪我ですんだ。
お医者さん、さすが!
家路につくまではオヤジにこっぴどく説教された。
もし家にオヤジも母親もいなかったら一体、この僕はどうしていたのか。
大袈裟かもしれないが、僕はこの幼稚園時の体験から死というものがどんなものか、意識するようになった。
オレンジ色の傘はそれからはトラウマになって使わなかった。白い柄の部分にはかすかにざらざらした面があって血液の跡と思われる朱色を残していたからだ。
孝ちゃんは、次の日は何事もなかったように接してきた。憎たらしいが孝ちゃんを責めるつもりはなかったのでいつものように接した。
たかが傘。侮るなかれ、傘。
了
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