2

1/1

63人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ

2

『長谷川さん、これもお願い。』 『はい。』 別れを告げられても、隼人はいつも通り 私に仕事を振ってくる。 私もいつも通り、それをこなす。 3年間。 私達が付き合ってたことはめんどくさいのを避けるために 隼人の提案で会社の人には内緒にしていた。 お互い仕事が1番で。 って感じで始まった関係だった。 『長谷川さんみたいな女性って 俺の理想なんだよなぁ……』 『なんですか?急に。』 『女の子って基本めんどくさいじゃん? さっきまでニコニコしてたのに今は怒ってたり 感情の浮き沈みが激しいって言うか。 その点、長谷川さんっていつもクールで 何でもそつなくこなすでしょ?気もきくし。 一緒に居てすげぇ楽。』 『それはどうも……』 内心、ドキドキしっぱなしだった。 木村隼人は営業部のエースだし。 顔も整ってるし。 お世辞って分かってるけど、嬉しかった。 『あのさ、長谷川さんって彼氏居るの?』 『………なんでそんな事聞くんですか?』 『なんでかな。 長谷川さんの事が気になるからかな?』 『………………反応に困るんですけど………』 『困ってる長谷川さんも、好きだよ。』 今思えば、始まりも曖昧なまま いつの間にか恋人同士の関係になって 3年も経っていた。 そして終わりもいきなりだった。 『絢香って今26歳だよね? 結婚とか考えてるよね?』 『結婚……ですか……』 『絢香くらいの歳の人は当然考えてると思うんだけど。』 そりゃ、このまま隼人と結婚出来れば嬉しい。 もしかして、プロポーズの事前調査かも?と思ったり。 『俺はあと10年は結婚しない。』 『えっ……』 正直ショックだった。 『今は仕事が楽しいんだ。 でもそれは俺のワガママだから。 絢香の時間を拘束するのは駄目だと思って。』 『俺達、もう終わりにしよう。』 10年くらいなら、待てるかもしれない でも、この3年間の付き合いで 私は隼人の考えてる事は分かるようになっていた。 私がみっともなく別れを拒むのは 隼人は望んでいない。 もう、彼の中で決めた事なのだ。 『分かりました。』 『今までありがとう。楽しかったよ。』 『私もです。』 せめて、嫌われないように 彼が好きだと言ってくれたクールな私で受け入れた。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

63人が本棚に入れています
本棚に追加