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とりあえずソファを捨てた。 よく隼人が寝落ちしていた彼のお気に入りのソファだ。 そして何度も抱き合ってきたベッドも捨てた。 隼人が好んでいたコンサバ系の服も 化粧品も テーブルも テレビも 電子レンジも 調理器具も 隼人を思い出さないように どんどん捨てないと 断捨離しないと… どんどん どんどん…… 『長谷川さん、最近何かありました?』 『え?』 会社の同僚が心配そうに聞いてきた。 『服もいつも同じだし…お化粧もしてないですよね? どこか具合でも……』 『あぁ。私、今断捨離中なのよ。 良いわよ?捨てると気持ちがスッキリするのよ。』 『い、いえ……私は大丈夫です。』 そそくさと離れていった。 捨てないと 捨てないと 私の部屋にあるのはもう段ボール1つだけ。 隼人の荷物を詰めた段ボール。 『これを返せば……きっと』 そう思うのに、また中身をひっくり返してしまうのだ。
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