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『俺の実家はね、畜産農家なんだ』
『へぇ!牧場ってこと?素敵!』
『自然と動物に囲まれて、それなりに充実してたね。』
『小さい頃はその仕事の意味が分かってなくてね。
だから俺は小学生の真ん中くらいまで、知らなかったんだ。』
『?』
『自分の家の食卓に並ぶ肉が全て
親と一緒に毎日愛情込めて育てていた牛や豚や鶏だったなんてね。』
『俺はそれから、牛や豚や鶏の肉が食べられなくなった。
食べようとすると、可愛がっていたあの家畜の顔が嫌でも浮かんでしまうんだ。』
『……あ……それで…』
『愛着が沸いちゃうとダメなんだよ。きっとね。』
こっちが笑顔を見せると
大抵相手もつられて表情がゆるむ。
『なんてね。』
『えっ………なに?嘘なの?どこから?』
『さぁーてね。』
『もー!真柴君って冗談言うんだ?
すっかり騙されちゃった!』
冗談か。
『ねー?なんの話ぃ?』
今度は髪色の明るい、ショートカットの女の子がずいずいと割り込んできた。
『内緒。』
『えー?なにそれー。』
『ね?』
『う……うん!』
セミロングの女の子は顔を赤らめて頷いた。
あぁ。なんかお腹空いてきたかも。
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