壱話 始マリニシテ奇ナル

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 多少賑わっている商店街の揚げ物屋に二人の男子高校生が、今しがた買ったコロッケを片手に立ち話をしている。どうやら帰宅途中に寄り道をしているようだ。  揚げ物屋の店主は奥の部屋に行ってしまった。 「で、太一は明日も部活かぁ」  ジャガイモコロッケを片手に持つ、茶髪ヤンキー風の少年は城嶋新二。見た目は田舎のツッパリヤンキーだが、根は優しく友人思いである。髪型をこのようにツンツン頭にしているのは単に、これならモテモテになるはず、という下らない発想のゆえの結果。  彼が言う「太一」は、二人の幼馴染で高校も一緒の新庄太一。甲子園を目指している「野球バカ」である。 「うーん。放課後話したけど、大会が近いから土日も部活らしいよ」  一方新二の向かい合わせに立つ少年は、氏上造。新二とは幼稚園の頃からの親友で今も同じ学校に通っている。  氏上の下の名前は「造」という漢字で書いて、「みやつこ」と読む。完全な当て字で、平安人みたいな名前から本人は気に入っていない。  クラスの皆も読みにくいと上の苗字で呼んでいる。  そして二人が通っている学校は隣町にある県立一文高等学校。この町は中学校と小学校しかなく、高校はやはり隣の町にいくしかない。  ただ、隣町に行くには一時間に一、二本しかないバスを使うしかない。
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