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僕達は苦笑いを浮かべながら、ファミレスに行くことにした。
〇 〇 〇 〇
ファミレスに着くとバイトの店員に案内された場所には榊原先輩がいた。
卒業後も以前と変わらないだらしない恰好をしている。中途半端に染めた金色のボサボサの髪は、イケメンには見えない。むしろ金田一の方が合う。
榊原先輩は眠そうな目でこちらを見てきた。
「お、お久しぶりですね」
僕は苦笑い浮かべ、挨拶をした。
「まぁ、座って。そうだ、何か食べる?」
促されるまま席に座るとそれぞれ食べるものを決め、ベルを鳴らす。
注文を聞きに来た店員は「まだ頼むの?」という表情をして、注文を受けた。無愛想な笑みのまま厨房の方に向かっていった。
近くに置いてあった伝票を見ると早朝の五時からずっとここに居座っているようだ。それならあの店員の嫌そうな顔は分かる。
こればかりは僕達は店員の気持ちに賛同する。
「単刀直入に聞くけどサァ、先輩はどこまで知っているノ?」
そう言えばクルワは榊原先輩とは初対面であった。でも、なんであんなに敵視剥き出しの表情で聞くのだろう。
一方榊原先輩はグラスに入っているジュースをストローで、音を立てながら飲んでいる。目は相変わらず死んだような細い目だが、視線はしっかりとクルワを見ている。
謎の沈黙がこの場を包む。
互いが一言も発さず、誰かが口を開くまで待っていた。
「ミックスグリルで~す」
金髪のアルバイトの店員が料理を運んできた。
空気も読めない割り込み方だけど、僕は内心で感謝を述べておく。
次々とテーブルに並べられていく料理達。誰もが黙ってそれを見ている。
「注文の品は以上ですかぁ~?」
僕達は無言で頷いた。
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