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店員がかったるそうに注文票を置き、厨房に戻っていく。
「さっきの質問だけど、全部さ。あの町のことを全て知っているし、お前達が祀っている神のことも知っている」
クルワの表情が豹変する。
「そう警戒するな。だから僕は逃げたし、誰にもそれを語るつもりはない。そういう約束だからさ」
そう言い切ると空になったグラスを持ち、立ち上がる。
ふらりとした足取りでドリンクバーコーナーに向かい、体を揺らしながらどれにするか悩んでいた。
……相変わらず自分勝手な人だな。
誰にとっても拙いことを軽い口調で、軽い言葉で平然と言う。僕も何度か先輩の荒行を見ているからわかるけど、あれは付き合い方を考えた方がいいタイプ。
普通に初対面の人に対しても上から目線で、傷付ける。
でも本人にとっては相手が傷つこうが何しようが、多分、関係ないんだと思う。
「よく、氏上君は同じ部活にいられたね」
色んな意味で花形さんが褒めて——と言うより励ましてくれた、のかな。
ようやく決めた先輩が帰ってきた。
それも得体の知れない異様な光を放つジュースと共に。
「……先輩。つかぬ事をお聞きしますが、それは一体何でしょう」
先輩と同類の新二でさえドン引きするものだった。
あ、同類じゃかわいそうか。うーん。でもドリンクバーで色々混ぜるのは変わらないし。
あの地球上で再現するのが難しい混沌色のジュースは、新二ですら作れない。
「宇宙からの色だネ」
クルワがボソッと言った。
一同の視線を集めた榊原先輩はすぅと、それに目線を落とした。そして、ゆっくりと新二の顔を見、首を傾げた。
「うん? ただのジュースだよ。アイスコーヒーを二、メロンとカル〇スを三、烏龍茶を二、ブドウを一、さい——」
「もういいです! わかりましたから!」
新二も我慢の限界に達したみたい。
確かに榊原先輩と付き合うのは大変だし、色々苦労が絶えないから。
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