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梅雨入り宣言とは裏腹に、中々雨が降らない。
これは夏場の水不足が心配だと囁かれる頃、
ようやく夜半になっていきなりの雷雨となった。
中々寝付かれなかったのと、休日の気安さで遅く起きたまりかは
パジャマ替わりの部屋着のまま、カーテンを開いた。
重く低い空から降る霧雨で、街全体が灰色に染められている。
まりかは窓の横にある、簡素な包装をされた傘を見て、
にっこりとほほ笑んだ。
「ようやく出番ね。」
これは清水からの初めての誕生日プレゼントだった。
気の毒なくらい緊張して
「これ、まりかさんに使ってもらえたら嬉しいんだ。」と差し出された。
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