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まりかは二十代も半ばを過ぎたというのに、
学生時代から実際に付き合いたい、と思える人はひとりもいなかった。
友人たちからは、あんまり望みを高く持っちゃだめよ、とからかわれたが
それは違う。
その誰かとお付き合いする時間と、
自分が今やりたいことをする時間とを天秤にかけると
どうしても自分のやりたいことの方を優先してしまう。
これは身勝手な理由でもあるし、
相手にも申し訳ないなぁと感じてしまうだろう。
友人たちのように器用に振舞えない分、つい慎重にもなったのだ。
でも清水に何度か会うたびに、まりかは彼に惹かれて行った。
彼はまだ学生で、年齢も下だ。
チャーミングではあるけれど、決してイケメンの部類には入らない。
それでも実直で、生真面目で優しくて
話す言葉も彼の思慮深さと賢さが溢れていた。
何より彼と自分は興味の対象がよく似ていた。
初めは親友か姉弟のような気持ちでいたものが、
次第に心を寄せている自分に気づいていった。
きっかけは、まりかの祖母が倒れているのを助けてくれた事だった。
その感謝と年下の気安さで、
祖母の家の隣の清水のアパートに上がり込んだこともある。
楽しく話は弾むのだが、なんとなく距離をあけられている気がする。
嫌われていないのは解るのだが、やっぱり五歳も年上のお姉さんじゃ
恋愛対象外なのかもしれないわね・・とまりかはふっとため息を吐く。
それでも誕生日を覚えていてくれて、こうして贈り物をもらえると
まりかは素直に嬉しくなる。
早速使っているところを見せに行こうと、まりかは身支度をして外に出た。
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