来迎

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人通りのない歩道で、さした傘をくるくると回してみる。 傘にたちまち溜まった雨のしずくが、遠心力で四方に散って 青の濃淡に鮮やかに染められた紫陽花を揺らした。 『この傘の絵の趣味は、微妙だけれどもね・・。』 まりかは肩をすくめてくすりと笑った。 電車を二つ乗り換え、目的の駅に着くころには、 雨脚も少し強くなって来ていた。 駅から二十分も歩けば、母の実家と清水のアパートに着く。 少し足を速めてまりかは歩き出した。 気づくときゅっきゅっという音が、ずっと後ろからついて来ている。 まりかが振り向くと、黄色いレインコートを頭からすっぽり被り 水色の長靴をはいた六歳くらいの男の子が、 直ぐ近くで同じ様に立ち止まり、彼女を見上げている。 音は彼の長靴が、濡れたアスファルトを踏む音だった。
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