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「もう本当に超絶イケメンだったんだから!」
客でにぎわう馴染みの居酒屋で、私は対面に座っている仕事終わりの和美に、先程起こった奇跡について力説していた。
「あんなマイナーな小説家の本を、あの時間にあの場所でふたりが同時に取ろうとするなんて、もうこんな小説みたいな出会いかたって運命以外ありえないでしょ!? 運命!」
酒の力もあってか、私のテンションは上がりっぱなしだった。
「ここまでステレオタイプだとむしろ陳腐な気もするけどね」
和美は焼き鳥をほおばりながら投げやりに言った。
「あ~あ、せめて名前ぐらい聞いておけばよかったな~」
私は自らの不覚に、がっくりと肩を落とした。
「あの人だったら、あの時間帯に割とよく来てるみたいだけど?」
和美の朗報に、私はふたたび息を吹き返した。
「それ、本当!?」
「うん」
「決めた。私、またあの図書館に通う。もう一度あの人に出会えるまで」
私はそう決心すると、契りとばかりに、目の前にある飲みかけの大ジョッキを一気に飲み干したのだった。
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