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ドキドキ初デート
次の日曜日、ついにこの日がやって来た。灰谷さんとの初デートの日だ。私達は彼の提案で一緒に映画を見に行くことになった。
午後1時、晴天。私は男受け抜群コーデにばっちりと身を包み、待ち合わせ場所である駅前の広場に、集合時間の30分前にやってきた。
彼はそれから15分後、つまり約束の時間の15分前にやってきた。相変わらずの爽やかルックだ。
「すみません、待たせちゃって」
「いいんです。私が勝手に早く来ちゃっただけですから」
彼は私の全身をまじまじと見ている。そして照れたように目を逸らしながら、私が望んでいた言葉を言った。
「その服、すごく似合ってますね。かわいい……」
その一言で、難航した服選びの苦悩が全て報われてしまった。
「じゃあ、行きましょうか」
彼は先程の自分の発言を隠すようにそう言うと、そのまま駅に向かって歩き出した。私はそんな彼がたまらなく愛おしく感じたのだった。
私達は目的のシネコンがある最寄の駅へ行くため、電車に乗っていた。隣に座る灰谷さんをちらちらと見てしまう欲求を抑えられない。堂々と彼を見つめるためにも、ずっと気になっていたことを質問してみた。
「あの、灰谷さんっておいくつなんですか」
「いくつに見えます?」
彼はイタズラな笑顔を浮かべて聞き返してきた。
「う~ん、26くらいかな?」
私は希望的観測も込めて、私と同じ年齢を答えてみた。すると彼は驚いて、興奮気味に言った。
「すごい、正解!」
「本当ですか!? 私も26なんです」
「じゃあぼく達、同い年じゃないですか」
私はこの偶然に対し、彼との出会いが運命であることを、より強く確信したのだった。
「ぼく達タメなのに敬語で話すっていうのもおかしくないですか? じゃあこれからぼくが手を叩いた瞬間から、お互いに敬語はなしってことで」
そう言って彼は両手を前に出して、手拍子をする直前の姿勢をとった。突然の意外な提案に私は慌てた。
「ちょ、ちょっと待って……まだ心の準備が……」
私の言葉をさえぎり、彼は「はい」という掛け声と同時に、一回だけ手拍子を打った。パンという乾いた音が電車内に響く。近くにいた何人かが、その音に反応して私達のほうを見やった。
「今からスタートだよ、いい?」
私は彼の言葉に照れながらも、「うん」とだけ返事をした。
自分のほうから敬語を止めたいと言ってくれるほど、彼は私との距離を早く縮めたいと思ってくれているのだ。そう思うと、この恋がうまくいくのかという不安が、段々自信に変わっていくのを感じたのだった。
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