新たなダンジョン

3/14
前へ
/97ページ
次へ
ピンポーン…… ピンポーン…… 「うぅ。 もう少し寝かせてくれ…… ッ! ロ、 ロビンフットか!? 」 意識がボヤけていたが俺はベッドから飛び起きる。 昨日速達で頼んだ例の物が頭に浮かんだのだ、 壁に衝突しながらもどうにか受け取る事に成功する。 宅配のお兄さんはかなり引いていたがかまわないだろう…… 「きたよ! きたよ! 俺のロビンフット! 」 寝起きで意味がわからない事を叫びながらも、 中身を開封していく俺のテンションは、 更にヒートアップしていた。 思いのほかデカイが素晴らしくカッコイイではないか! 「おぉぉっ! 最高じゃないかっ! 」 俺は待ちきれずに、 コンパウンドボウを組み立てていく。 ブラックカラーがシブい! とにかく素晴らしい。 少し時間はかかったが、 なんとかコンパウンドボウを組み立て終えた俺は、 購入した全てのプロテクターを装着していくのだった。 「ヤバッ…… めっちゃ狩人じゃないか! 絶対強いやん俺…… 」 見栄えだけの感想を鏡の中の自分を見ながら述べてしまった。 モンスターやダンジョンの存在を知らない人から見れば、 俺はただの不審者以外の何者でもないだろう。 問題は実際に上手く矢を放てるかどうかと、 コンパウンドボウを引けたとしても、 実戦で使用できるかどうかだ。 まずはネットで見た練習から試してみる事にする。 「フゥゥ〜、 やってみるか…… 」 初心者の練習は素引き(すびき)と呼ばれるものからするらしく、 練習用の軽い弓で矢もまだつがえずただ引く格好を繰り返し、 基本の引き方を練習するらしい。 俺は練習用の弓は持っていないので、 そのままこのコンパウンドボウを使用する。 ゆっくりと75ポンド(約35Kgの重さ相当)ストリングを3本の指で引いていく。 レベルアップのおかげだろうか、 引き始めはある程度の力を必要としたが、 コンパウンドボウの特徴であるホイール・カム (リムの両端に取り付けられる偏心滑車)によって、 後半はほとんど力を入れずに引く力を激減してくれていた。 あれ…… 簡単に成功してしまった! 一般の成人男性ならかなりの筋トレや練習をしなければ、 最大限までストリング(弦)を引き切るのは難しいと言われているぐらいのモノだったのだ。 「これなら、 何度でも疲れる事なく矢を放つ事ができそうだな」 俺は何度か素引きを繰り返し感覚を確かめていく。 正直100ポンドぐらいでも問題なさそうだと感じてしまう。 次は実際に矢を使って試し打ちを始める事にするか…… 裏庭へと移動した俺は、 和室から畳3枚程を無理矢理引ッぺがして持って来ていた。 ちゃんと後で畳を張り替えるつもりですよ。 3枚の畳を重ねると、 庭に生えている木へと立て掛けていく。 とりあえず今はこれで十分だろう。 立て掛けている畳へと、 ダンボールで切り抜いて作った歪な人形を貼り付けると、距離をとっていく。 まずは50mぐらいから始めるとしようかな…… 通常は1mや3mぐらいの距離で矢を放つらしいが、 あまりのんびりと練習しているわけにはいかない。 まず一度感覚を掴んでみたいので、 俺は矢をコンパウンドボウへと設置すると、 ゆっくりとストリングを引き切る…… シュバッッ……! 狙いを定めて綺麗なフォームで矢を放っていくと弓特有の風切り音が響き、 そのまま綺麗に人形の頭部部分へと、 吸い込まれていくように突き刺さったのだった。 「あれ…… なんか上手くいったみたいなんだけど…… はは…… 」 俺が放った矢は歪な人形の眉間部分をしっかりと射抜いていたのだ。 ビギナーズラックかもしれないと続け様にもう一度矢を放つ。 「……ふむ、 なんかこう上手くいくと怖いよね」 この際一気に90mもの距離をとった俺は、 再びストリングを引き切ると、 感覚で射角を調整していく。 狙いを定めるとそのまま一気に矢を放つのだった。 矢は再び風切り音を響かせ歪な人形へと吸い込まれていく。 頭部を狙ったはずの矢は人形の眉間からハズレて耳の辺りへと少しずれて刺さっていた。 「あぁ、 ダメだったか…… まあ、 一応当たったようだしそんなに上手くいくわけないよな! 」 俺は気がついていなかった、 矢についている羽根の意味を。 今放った矢は羽根の部分が欠損していたのだ、 羽根は直進性を持たせる効果があり、 命中力を高めてくれる。 羽根が欠けていた場合狙い通りには飛ばずに、 起動がブレて変わってしまうのだ。その効果は…… 「おぉぉっ、 今度は命中したぞ! 次も当たるかな…… おぉぉっ! ならこれは……おぉぉっ! それじゃあ振り向き様に……おぉぉっ! ジャンプして…… おぉぉっ! 」 ………… …… 検証結果 「俺の命中率は98%だ!! 」 50本の矢を繰り返し使って合計100回もの(2回羽根欠損矢を使用)矢を放っていた。100回中2回は的を僅かにズレた程度だったが、 ハズレはハズレだろう。 どうやら実戦でもコンパウンドボウは十分使う事ができると、 確かな手応えを感じている。 この感じなら100m圏内で確実にヘッドショットを決める事ができそうだった。 「コンパウンドボウなんて素晴らしいんだ…… 」 後に俺の射撃は幾度と無く人々の窮地を救う事になるのだが、 まだ先の話となる……
/97ページ

最初のコメントを投稿しよう!

879人が本棚に入れています
本棚に追加