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新たなダンジョン
昨日使ってしまった包帯や傷薬の補強を済ませた俺は、 あても無くダンジョンを探していた。 目ぼしき場所を見つけると原付でその道を潰していく、 と言う地道な作業を繰り返していた時だった。
ダンジョンを発見しました
突然聞こえた声に驚いてしまう、 俺はすぐに脇道へと原付を停車させると、 限定スキルの【地図】でダンジョンを確認していく。
【地図】は半径20㎞圏内にあるダンジョンを通知してくれるチートスキルだ。 その他にも俺が一度通った道やダンジョン内の道すら自動マッピングしてくれると言う性能は神スキルだろう。
可視化された地図の上には、 赤く点滅するマークがあった。 恐らく此処にダンジョンがあるのだろうか。 この場所から20分ほどの地点になるのだが、 やはりと言うべきか…… ダンジョンは山の中にあるようだった。
「ダンジョンの噂が中々上がらないのは、 人の目につかない場所にあるのが原因だよな」
街中に謎の穴が突如出現なんてしたら、 大騒動になるのは目に見えている。 いずれはそんな事にもなり得そうで怖いが……
とりあえずは、 一般の人達が普段行かない様な場所にダンジョンがある分には、 被害が少なくなるだろう。
「よし、 下見に行ってみるか。 それにしても前のダンジョンとさほど距離がない場所だよな…… 」
前のダンジョンとは逆方向になるのだが、 俺の家から30㎞も離れていない場所だったのだ。 俺は何とも言い表せぬ不安を感じてしまう……
もしこのような狭い範囲で、 ダンジョンが存在しているとすれば国内に数十万、 数百万のダンジョンが存在している事になってしまうだろう。
「まさかな…… 偶然だよな…… 」
最悪の考えを振り払いつつも、 目標のダンジョンへと向かうのだった。
…………
……
「ん〜…… この辺のはずなんだが、 見当たらないな」
俺は昔使われていたと思しき山道を歩きながらも、 地図を確認しながらダンジョンの入口を探していた。 最悪な事に、 山を下れば近隣には中学校がある場所だったのだ。
ダンジョンからもしもモンスターが抜け出れば、 学生達に被害が出てしまう事も考えられる。
「くそっ! なんで入口がないんだよ! 」
休憩をする為に大きな倒木へと腰掛けていく、 空間ボックス内から飲料水を取り出した俺は、 とりあえず一度水分補給をするのだった。
ここに来て数十分はダンジョンを探していたのだが、 入口が一向に見当たらないのだ。 かなり念入りに山肌などを探すが、 一向に穴と呼べるものすら見つからない。 完全にお手上げ状態だった。
辺りは倒れた木があるだけで、 特におかしな場所も見当たらない。
「ん? まてよ…… この周辺だけやたらと倒木が多いよな。 いや、 あまりにも多すぎる。 もしかして! 」
俺は念入りに倒木の周辺を見て回る。 予想が外れていなければ、 きっとダンジョンは見つかるはずだ!
…………
……
「あ、 あった!! 」
倒木が重なり合った隙間には、 ポッカリと地面に大きな穴が口を開けていたのだ。 この周辺に大量の倒木があったのは、 地面の中にダンジョンが突然出来てしまった事によって、 木の根に養分が行かなくなり、 このようにダンジョンの上に自生する木々が倒れてしまったのだろう。
倒れた木は比較的新しい物もある事から、 最近出現したダンジョンだと考えられた。
ダンジョンはいつから存在していたのだろうか、 数十年前には既にあったのか、 それとも最近出現したのかはわからない……
俺が言える事は世界中で最初に、 俺が謎多きダンジョンを発見してしまったって事だ。
少しでも情報を集めて今後に役立てなければ。
倒木の隙間から見える穴は約1mぐらいはあるだろう。 一応入るのは問題ないサイズなのだが、 深さなどが全く分からない為に安全を考えて、 ロープで穴へと入らなければ危険だと判断した。 準備が大事だと言う事を、 俺は最初のダンジョンで身に染みてわかっている。
俺はこのダンジョンの下見を一度終了し、 今日は再び原付でダンジョンを探していく方向に切り替えたのだった。
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