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プロローグ
燃えたぎる炎。
身を刺す高温。
喉を焼く熱気。
武士の生活を支えていた柱や梁は、炎の前には脆すぎた。
馴染みの城内は炎に纏われ、火の粉を散らしながら崩れ落ちる。
鉄でできた鎧は剣や弓の威力は軽減してくれるが、火を相手にすれば忽ち手のひらを返したように身を焼き付けてくる。
熱い……。逃げ遅れた者は悶え苦しみ、いつの間にか黒煙に体内を侵されたあとは、意識も絶え絶えで炎に喰われる。
黒い炭と化したいくつもの手が、それでも助けを乞うように宙空を彷徨い、やがて力尽きる。
まさに、地獄。
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