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20年振りの再会
ヒロコは鏡の前で服を当てて見ている
もうすぐ20年振りのゼミの同窓会があるからだ
元女子学生も今は立派なご婦人になっているのだろうか
20年振りだからみんなオシャレをしてくるだろう
今の生活がどうであれ女は見栄を張る生き物だ
エステなんか行ったり高そうな服を夫にせがんだりする者も少なくないはずだ
なにせ20年振りだから、その時に疲れたやつれた貧乏くさい顔をしていたらずっとそんな風なレッテルを貼られて、みんなに言われてしまう可能性がある
挽回するにしても今度いつ同窓会が開かれるかなんてわからない
そのあいだ中、ずっとあの人は昔は綺麗だったけどこの間、会ったらすごく老けちゃってたのよ〜なんて言われ続けてしまうかも知れないのだ
だがヒロコは新しい洋服を買ったりしない
むしろ上に着る服は少し褪せているようにも見えるほどだ
下は今、流行りのフレアスカートをはいていくつもり
ヒロコは独身でバリバリ働いていたし、それなりの肩書きと経済力も持っている
が、心の中に誰にも見えない鋭いトゲが刺さったまま20年も朽ちずにあるのだ
今回の同窓会でこのトゲを抜いて癒したい
当時大学のこのゼミで一緒だったコウジとずっと付き合っていた
卒論が終わったら話があると言われてヒロコはゆくゆくは結婚しようと言われると期待していた
卒論が終わったある日、ヒロコは明るい気持ちでコウジに会いに行った
すると、ヒロコが、知っているいつものコウジはどこにもいなくて見たこともないコウジが待っていた
コウジはなるべく無表情でヒロコがすがる余地がないほどに冷たく
もう、終わりにしよう
と、言った
ヒロコが何回、理由を聞いても冷たく同じ言葉を言うだけだった
ヒロコは諦めたくなかったがどうすることも出来ずショックから内定していた会社を辞退して姿を消した
それから二人は一度も会う事なく20年が経った
今回の同窓会は友人が幹事でコウジが出席すると教えてくれたのでヒロコも決心したのだった
あの時の別れの理由が、知りたい
で、ないと心の中にあるトゲが抜けないのだ
ヒロコはコウジとお揃いで着ていた赤いポロシャツを着ていくと決めていた
コウジが、気がつくかを知りたい
気がつかなかったときは
気がつかなかったときは
刺してみようかな
なんて
とにかく理由を聞きたい
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