ふたりの過去とこれからと

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ふたりの過去とこれからと

友達には、二次会には、遅れて行くからと店の名前を聞いて別れた 急いでカフェに行くとコウジが待っていた 来てくれてありがとう わたしも、話したかったから良かった どうしても、20年前のことを話しておきたくて、これが、最後のチャンスだと思って、出席したんだよ ヒロコもそれを聞きたくて出席したんだろ うん どこから話せばいいのかな えーと 卒論が終わった頃、オレはヒロコに急に別れようと言ったことからだったね まずはあの時は本当に悲しい思いをさせて申し訳ありませんでした コウジはしばらく頭を下げ続けていた もう、いいよ わかってくれていたんなら わたしもヤケになって内定を辞退して、しばらく北海道の親戚のところで引きこもってたの そうだったのか ごめん それで? あっ、実は当時ゼミに並木イツコっていただろ? イツコから付き合って欲しいと何回も言われていたんだよ もちろん、ヒロコのことを承知で言ってた オレもヒロコと、真剣なんだとイツコに言ったよ でも、ある日 一度くらい良いかなとオレも若かったから思っちゃって飲みに行ったんだ そして、そのまま一晩ホテルで過ごしてしまった ヒロコ、ごめん 卒論で忙しくしていた頃イツコから妊娠したと言われたんだ 勝手だけど堕ろしてくれと頼んだよ でもイツコは大好きな人の子を堕ろせるわけないでしょうと言って絶対に産むからと言って聞かなかったよ それで実家の両親にも伝わり、もう結婚するしかなくなったんだ イツコのうちは宮崎で宮崎地鶏を生産していたのでそれを一緒にやる事になった イツコも結婚してからはオレに尽くしてくれたし、それなりに幸せだったよ でも、イツコは罪悪感をずっと持っていたんだな 時々、ヒロコに申し訳ない事をしたと言って涙ぐむこともあったよ もし、私が先に死んでヒロコが一人なら一緒になってもいいからねナンテ言ったこともあったけどそんなことあるわけないし苦笑いだったよ そしてイツコは可愛い女の子を無事に産んでくれた イツコも仕事に家事に育児にと忙しくしていたよ でも、子どもと買い物に行った帰りに事故にあってさ、二人とも死んじゃったんだ オレもしばらく仕事も何もできなくなったよ 両親もそれを境に元気がなくなってさ、稼業はオレが主体でやることになったんだ バチが当たったのかな それから両親も亡くなり従業員を雇って今に至るってわけ コウジはずっと一人だったの? そうだよ もう、何も考えられなかったよ そうだったの それは、ご苦労様だったね ヒロコは? ご主人とか? わたし、独身を通して来たの えっ? オレの、せい? そうね、そう思ってた 見返してやるとずっと思ってた 後悔させてやるってね それで仕事を頑張ってきたの でも・・・ コウジも苦労したのね お互いに年を重ねて色々経験するとさ、許す心が出てくるものね 何だか、色々聞いたら許せちゃった ありがとう それにしても、ヒロコは全然変わらないな 体型も なに、体型って 今はセクハラ発言だよ 違うよ その、赤いポロシャツ オレとお揃いのだろ えっ? おぼえてたの? おぼえてるよ 楽しかった時だからね やだ 気が付かなかったらののしってやろうくらいに思って来たのに 当てつけに着てきたのか? そうよ 忘れてないよ 毎日、見てるんだから 毎日? そう この体型だから着られなくなったから軽トラのシートに着せてある 毎日、ヒロコの上に座っちゃってるってこと イツコも座ってたけどな えー、ひどいな まぁ、いいわ おぼえてくれてたんだね イツコもヒロコの事を思い出してもいいって言ってたよ わたしとこうしてここにいてくれてるんだからって そうなの・・・ ねぇ、わたし、コウジの仕事を手伝えないかな? 別に奥さんにしてって言ってるんじゃないの 仕事は大変だよ いいわよ イツコにできたんでしょ わたしにも出来るわよ そして、いつか イツコがいいよって言ってくれてる気がしたら そのときは そのときは そのときは・・・ ありがとう、ヒロコ わたしも赤いポロシャツ着てコウジの赤いポロシャツシートに、座るからね ふたりは、笑いながらコーヒーを飲んだ ふたりにこれからがあるのかどうかはわからないが間違いなくヒロコの心のトゲは抜けたことは確かだろう
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