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心臓の弱い人間ならば一分足らずの内に卒倒するだろう、と容易に想像出来る。
不気味な森だった。
恐怖で竦むという問題ではなく、嘔吐を催し地獄でもいいから逃げてしまいたいと、心に思わす不気味さだ。
そのような場所を男は一人、歩いていた。
何故このような場所にいるのか、男自身も分からない。
歳は二十代後半辺りだろうか。どうであれ、若い男だった。
寿命はとっくに過ぎただろう黒ばんだすにーかーを履いて、伸びきった灰色のすうぇっとに、ヨレヨレの白いてぃーしゃつを着ている。
どう見ても寝巻姿だ。
先にも述べたように、ここは不気味な森である。そんな森を一人で歩いているにも関わらず男は至って平常通りだった。
自分でも説明しようのない妙な冷静さをもっていたのだ。
なにを恐れるか、男は脳と心臓に復唱して言い聞かせながら、のたり、のたり、と確実に歩いていた。
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