序幕

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 事が起きたのは、丁度この日の早朝だった。眠れない程の激痛が頭を襲い、男は飛び起きるように目が覚めた。  頭蓋骨が割れるような痛みだった。頭を()(むし)りながら荒い呼吸を繰り返した。  暫くして激しい痛みは治まったが、頭痛とも言い(がた)い、頭の内からずんずんと重石(おもし)のような塊が(ふく)れていく妙な感覚が消えなかった。張り付くような汗も、ひたり、ひたり、流れていく。  この日は運良く休日だった。会社に休みの一報をするという面倒を省けたことが不幸中の幸いである。  今日は不調の日なのだろうと安易に考えた男は一日療養に努めた。  朝から変わらぬ体制で布団に突っ伏していた。妙な感覚がどうも気持ち悪くて何も手に付かない。携帯を長時間いじることも動画を見ることも辛い。  暇を潰すことも叶わない。
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